■ちあきなおみは天才か?努力の人か?
ちあきなおみは、「天才」だという事は誰の目から見てもはっきりしています。
また天才である事以外に人間的に惹かれる面が非常に多い人です。
彼女の事を調べていくにつれて、仕事に対してどこまでも誠実に向き合ってきた人だと
いうことが垣間見えます。
人の何倍もの努力と苦労を積み重ねてきた人であるという事もです。
■ちあきなおみの天性はその歌声にあり
天才であるという事を突き詰めると、やはり「声」にあります。
普通の話し声は、低いというよりは女性らしい高めの感じなのに、いざ歌うと、
独特の艶を感じさせる、ハスキーで、それでいて音圧があり、世界に一つしかないような
バイオリンに似た名器のような何とも言えない響き・・。
こんな声の持ち主は世界中探しても何人もいないのではないでしょうか。
また、「演技力」という面においても天才と呼ぶにふさわしいです。
代表曲の一つである「矢切の渡し」では女性と男性を見事に歌い分け、顔の表情さえも
サラッと演じ分けるという表現力は身震いさえ覚える人も多いでしょう。
また、歌手としての勘の良さはデビュー当時から絶賛されていたようです。
例えば番組収録のカメラリハーサルの場面でも
「このくらいのテンポでステージの上手から下手へ来て、曲の何フレーズ目で真ん中で立ち止まって」
という注文にも普通の歌手は本番にならないとなかなかできないのに、
彼女はカメリハの段階でいつも一発で決め、演出家の意図をすぐに理解していたそうです。
■あまり知られていない芸人としての人生
挙げだしたらきりがない程のちあきなおみという歌手のずば抜けた天性は、
4歳の頃から「芸人」として培われてきた人生が、持って生まれた才能を後押ししたのでしょうか。
4歳の頃からタップダンスを始め、5歳で日劇デビューをし、10代は米軍キャンプ、
ジャズ喫茶、前座歌手として地方へドサ回りと、普通の人から考えると幼い頃から苦労して・・
と思いますが、
ちあきなおみは「別に辛いとも悲しいとも思わず、その日その日を一生懸命送ってました」と
昭和50年3月23日号の週刊明星でその頃の事を語っています。
毎日毎日ステージに立って歌う・・幼い女の子が「なぜ私だけ・・」と悲観的には思わなかったのでしょうか。
それとも、素直に「お母さんに褒めてもらいたら」という気持ちで頑張っていたのでしょうか。
なにはともあれ、生まれ持っての才能がある上、
4歳から人前で秀でた芸を観せていたちあきなおみは、
さみしさを乗り越える根性、人知れぬ所で普通の人が
真似できないほどの努力もしてきた事でしょう。
そうした中で育ってきた抜群の歌唱力で
人々が舌を巻くほど圧巻させるのは、呼吸をするように当たり前のことだったのかもしれません。