昭和43年「雨に濡れた慕情」で歌手デビューを果たす。ちあきなおみの名前には面白い由来があって、その当時のフジテレビのプロデューサー千秋予四夫の千秋(せんしゅう)をちあき名づけ、坂本龍馬の本名の「直柔」をなおみとして名づけられた。ですが、そのような芸名とは裏腹に歌手としての才能は優れたもので、特に作曲家などの歌のプロたちからの評価は非常に高いものがあります。昭和の大スター・美空ひばりに匹敵するほどの歌唱力と実力の持ち主と評されています。
彼女の歌う「矢切の渡し」は細部まで聞かせる本物の歌と評するプロもいるほどに昭和の歌手ちあきなおみの存在感は非常に大きい。昭和46年「喝采」が彼女の代表作で日本レコード大賞をも受賞しています。独得な存在感とその歌い方でコロッケの物まねが有名ですが熱烈なファンも多い。
作詞 吉田旺
作曲 中村泰士
昭和47年、レコード発売後3ヶ月でいきなり日本レコード大賞を受賞したこの曲は、その年最もレコード売上のあったレコード大賞最有力候補だった小柳ルミ子の「瀬戸の花嫁」を抜いてなぜ受賞できたのか・・・。
それは、この曲の型破りな楽曲の構成、独創性、それをずば抜けた演技力のある「女優」として歌う、ちあきなおみの、ずば抜けた歌唱力があった、からだとプロの音楽家達は言っています。
一見ABCのコーラスによる単調な作りに見えますが、Aパートが11小節でBパートのサビが9小節というのがかなり不定型だといえます。リズムが独特で、歌詞の所々に1拍休符、半拍休符があるのでまずこの曲のリズムを掴み取ることが必要でしょう。
素人がカラオケで歌うにはかなり難度が高い曲なのです。しかし、イントロの何とも言えない深みのあるトレモロ奏法を施した単弦のエレキマンドリンに合わせて「喝采」の独特な世界に浸り、自ら女優になったつもりで歌えばきっと上手く歌えることでしょう。
作詞 石本美由紀
作曲 船村徹
昭和51年、「酒場川」のB面に「矢切の渡し」という曲が収録されました。この曲がなぜ幻なのか・・という事をこちらで少し触れたいと思います。
まず、この曲を制作した人達はA面として発表するつもりだったのをちあきなおみのたっての希望で、B面に収録する事になったそうです。発売したその年は「およげ!たいやきくん」の空前の超大ヒットで、影が薄く、あまりヒットしませんでした。しかし、6年後の昭和57年、大衆演劇のスターで「下町の玉三郎」として活躍し、レコードデビュー曲の「夢芝居」を大ヒットさせ、その当時一世風靡していた梅沢富美男が演目で使う曲としてちあきなおみの「矢切の渡し」を選んだことがきっかけとなり6年前発売したこの曲が有線放送でチャート1位を獲得し、6年という歳月を経てやっと日の目を浴びる事になります。(その年にA面収録したレコードが発売になりました)
しかし、その当時のちあきなおみは、演歌というよりはシャンソン中心の曲を歌うことが多く、歌手としての幅を広める為女優業にも力を入れていたのです。演歌歌手というくくりだけでは収まりたくなかったのかもしれません。ここでは触れませんがレコード会社同士の色々な事があったのでしょう・・・惜しくもちあきなおみ盤「矢切の渡し」は廃盤になってしまうのでした。その後、細川たかし盤「矢切の渡し」が発売され、大ヒット。昭和58年、2度目の日本レコード大賞を受賞します。
当時は競作ブームということもありそれからというもの瀬川瑛子や島倉千代子、森昌子、中条きよし、春日八郎といった歌手達がこの曲を歌いました。梅沢富美男は「ちあきなおみ盤/矢切の渡し」を踊ってほしいというリクエストは当時からずっと長く途絶えたことはない、僕の中で亡霊のように付きまとっているかのような曲だ」と言っています。このような経緯がありながらもプロたちをも唸らさせ評価され続けているこの曲を一度はお聞き下さい。ちあきなおみの歌う「矢切の渡し」はまさしく絶妙です。
彼女の名器のような声、歌詞一つ一つをセリフとして捉え、表情や声までも変えて歌う抜群の「演技力」・・。
ぜひ聞いていただきたいおすすめの名曲の一つです。
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